パンドラの箱

毎夜毎夜　文字で気持ちが繋がる。

この箱の先に彼がいる。

同じ時に、同じ空気を感じる。

ただ、私達は、今流行りのカメラ付きでも

音声チャットでも無い。

他に誰も覗く事の出来ないメッセの繋がり。

毎夜平均4〜5時間彼と繋がる。

ただ、お互いにそれぞれの生活がある。

途中でご飯を食べたり、お風呂に入ったり

トイレROMだったり

子供に呼ばれて席を離れたり

でも、繋いだまま。

ノートパソコンをONしたまま閉じる。

時に激しい口論になる事もある。

見えないけれど泣き出してしまう事もある。

「泣いてるの？」

沈黙を必死で読もうとする彼。

今、何を考え、何を思うのか

顔の見えない私を差し図ろうとする彼。

長く付き合ってきたから

彼は私がどう考えるかわかると言う。

ガラスのようにお見通しだと言う。

哀しい時

嬉しい時

楽しい時

怒ってる時

落ち込んでる時

文字と文字の間にも気持ちが読めるんだよ。と、言う。

顔の見えない文字だけの会話。

パソコンの向こうに私は彼を見て、

彼は私を見る。

言葉に出来なくて、黙ってしまう時ですら

気持ちが伝わる。

逢えれば一番イイ。

目を見て、触れて、向き合って話せば

1秒でお互いが全てわかる。

気持ちを伝える時のキーボードのもどかしさ。

ニュアンスを伝えられないもどかしさ。

でも

彼は、それでも丁寧に一文字一文字から

その間から

全てを拾い出してくれる。

ありがとう。

私にとってパソコンは、彼との出会いの箱だった。

そして、今は彼との物理的な困難を

克服してくれる箱です。

今日も、この細いコードに

彼への　彼からの

強い思いを乗せています。

「愛してる」

「私も愛してる」

今日もその会話を最後にメッセを落ちた。

それが毎日の2人のおやすみの言葉。